【コラム】第166回幹事会特別企画富士通沼津工場で辿る「開発のDNA」と資産継承の志

2026年2月27日、富士通株式会社 沼津工場にて「第166回 COBOLコンソーシアム幹事会」を開催しました。
富士山の麓に広がる、緑豊かな約53万㎡の敷地は、かつてメインフレームの製造拠点として日本の高度経済成長を支えた「技術の聖地」です 。
当日は、COBOLコンソーシアム正会員、準会員合わせて14名のメンバーが集結し、富士山の麓に広がる約53万㎡もの広大な敷地で歴史の重みに触れつつ、これからのCOBOL資産をどう未来へ繋いでいくべきか、そのヒントを探る一日となりました。


 

1. 「ものづくり」から「価値創造」へ受け継がれる社会への責任
沼津工場は1976年の操業開始以来、大型汎用機の生産拠点として日本のITを牽引してきました 。1982年からはソフトウェア開発業務を開始し、現在はDX基盤やミドルウェアの開発・保守を担うR&D拠点へと進化を遂げています 。

見学を通じて強く感じたのは、その根底にある「社会への責任感」です。創業の母体である古河グループがかつて直面した公害問題(足尾銅山)を教訓に、富士通が掲げてきた「技術をもって社会に貢献する」という決意。単なる道具としてのコンピュータではなく、社会を支えるインフラを作るというその志は、現代の基幹システムを守り続ける私たちの使命感とも深く共鳴するものでした。

2.見学① 富士通アーカイブズ
【通信の原点からコンピュータの夜明けへ】
見学の第一歩は、富士通の創業から現在に至るまでの変遷を辿る「富士通アーカイブズ」から始まりました。

1935年、富士電機製造株式会社の通信機部門が分立して誕生した「富士通信機製造株式会社」 。そのルーツは、古河鉱業(現在の古河機械金属)や古河電気工業に遡ります。展示では、創業当時の電話機や交換機、通信用ケーブルといった「道筋」から、PBX、そしてパソコンや携帯電話へと、情報通信技術が社会の血管として発展してきた歴史を振り返りました。

特に印象的だったのは、技術の進歩の裏にある「社会への責任感」です。かつての鉱山公害問題を教訓とし、「技術をもって社会に貢献する」という不変の志が、現在のDX基盤やミドルウェア開発へと脈々と受け継がれていることを強く実感しました 。

3. 見学② 池田記念室
【世界最古級「FACOM 128B」の咆哮】
見学のハイライトは、池田記念室におけるリレー式計算機FACOM 128Bのデモンストレーションです 。

1959年に製造され、今なお「動く状態」で保存されているこの機体は 、重要科学技術史資料(未来技術遺産)にも認定されています 。

「ガチャン、ガチャン」と巨大なボックスの中で無数のリレー(継電器)が物理的に開閉し、綿密な計算を進める様子は、まさに「ロジックの鼓動」そのものです 。当日は、5元連立方程式を解くデモンストレーションは圧巻の一言 。
出力されたエビデンス(計算結果の記録)を手に取ると、現代の静かでスピーディーなコンピュータでは感じられない「計算という行為の重み」が伝わってきます。


    4. 見学③「バグ取り」の儀式
    【グレース・ホッパー氏へのオマージュ】
    リレー式計算機ゾーンでは、COBOLの母であるグレース・ホッパー氏への敬意を表し、ちょっとした「バグ取りイベント」を行いました。

    ご存知の方も多い通り、「バグ」の語源は、リレーの接点に挟まった本物の「蛾=虫(Bug)」です。今回は参加者が蛾のモチーフを持参し、当時のデバッグの苦労を分かち合いました。


    こうしたユーモアを交えた交流は、まさに「COBOLへの愛」を共有するコンソーシアムならではの瞬間でした。
    目に見える「虫」を取り除いていた時代から、複雑なコードの不具合と戦う現代へ。手段は変わっても、エンジニアシップの根底にある情熱は変わらないことを再確認しました。

    4. 見学④ 富士通のDNA
    【非公開ゾーンに眠る発明の魂】
    最後に、富士通の「DNA」とも言える貴重な研究成果や寄贈品が展示されているアーカイブゾーンへと足を運びました。撮影禁止の厳格な管理下に置かれたこのエリアには、日本のIT史を塗り替えた数々の軌跡が丁寧に保存されていました。
    その一部をご紹介します。

    ●通信が社会の血流となっていく時代を支え続けた、手動・電動の貴重な電話交換機の数々
    ●寝食を忘れて技術の進歩に捧げた圧倒的な熱量を感じる池田敏雄氏の緻密な自筆設計ノート、肉声(社内への訓示)
    ●人間工学を追求し、市販の電卓からプロトタイプを作成し改良を重ねて誕生した「親指シフトキーボード」
    ●ヨーロッパの海底で実際に使用されていた、重厚な海底ケーブル 等々

    展示されている貴重な実機へ感慨深さはもちろんですが、一つ一つの歴史を私たちと共に歩みながら案内してくださった富士通担当者の皆さまの、自社技術に対する深い愛情と、それを次世代へ繋ごうとする誇り高い姿が非常に印象的で、さらに深い感銘を受けました。

      5. 温故知新
      【資産を未来へ繋ぐために】
      今回の沼津工場見学は、まさに「温故知新」を体現する体験でした。初期の計算機が担っていた「正確さ」への執念は、現代のCOBOL、そしてこれからのAI技術へと確実に受け継がれています。

      過去の設計思想(DNA)を正しく理解することは、現代の資産を健全に次世代へと繋いでいくために不可欠なプロセスです。

      「古いから捨てる」のではなく、先人が築き上げた付加価値を正しく理解し、最新のAIやクラウド技術へとどう昇華させていくか。
      今回の見学は、私たちCOBOLコンソーシアムが担う「継承と発展」というミッションの重さを再認識させてくれました。
      私たちCOBOLコンソーシアムは、先人たちが築き上げた「堅牢さと信頼」という魂を大切に継承しながら、日本企業の資産価値向上に邁進してまいります。

      富士通沼津工場の皆様、素晴らしい体験と、暖かいおもてなしをありがとうございました。

      文:COBOLコンソーシアム 広報担当(株式会社アイディーエス)
      写真:第166回幹事会 参加メンバー一同